40のなりわい、10年の歩み ―まるもり仕事図鑑 番外編・CULASTA 10周年に寄せて―

2015年8月27日に、丸森町起業サポートセンターCULASTAが開所し、早いもので10年が経ちました。これまでにCULASTAを通じて40以上の会社や個人事業が立ち上がっています。この数字は、都市部のインキュベーション施設に比べれば、ささやかなものかもしれません。しかし、人口が減少する中でも、毎年途切れることなく新しい「なりわい」がこの町に加わってきました。

「やってみたい」が言葉になる場所

かつての丸森町には、起業に関する窓口への相談があまりなかったといいます。それは、起業したい人がいなかったからではありません。まだ事業とも呼べない段階の、一個人の中に芽生えた思いや疑問を、そのまま言葉にしてみる場が多くなかったのだと思います。

2015年の開所以来、CULASTAには「なんとなく、この町で何かを始めてみたい」「自分の好きなことを、仕事にできるだろうか」といった段階の人が多く訪れてきました。まだ計画書があるわけではなく、収支の見通しが立っているわけでもない。でも、「やってみたい」という思いがある。その揺れているところから話ができることが、この場所の出発点でした。

対話を重ねるうちに、その思いは少しずつ整理されていきます。誰に届けたいのか、なぜ自分がやるのか、どんな暮らしを望んでいるのか。漠然とした憧れはやがて、具体的な一歩へと変わっていきました。

この10年で生まれた仕事の形は、多岐にわたります。農業、飲食、ものづくり、デザイン、IT。町で育った若者が家業に新しい風を吹き込むこともあれば、都会でのキャリアを携えて移住してきた人が全く新しい価値を生み出すこともあります。

ここで共通しているのは、誰もが「自分なりの成功のものさし」を持っていることです。地域の人々と顔の見える関係を築くこと、家族との時間を大切にしながら持続可能な規模で商いを続けること、町の資源を活かし次世代に誇れる風景を残すこと。そんな「等身大の起業」が、この町では自然なあり方として認められてきました。人口が減っていく現実の中で、それでも「ここで生きていく」と決めた人たちの静かな熱量が、一つひとつの仕事に宿っています。

阿武隈川が運んできた、応援の気質

近年丸森町は、起業への取り組みで注目されるようになり、視察に訪れる自治体や団体も増えてきました。見学後に聞こえてくる感想は、補助金や施設の充実に加えて、「地域の受け入れ姿勢」についてです。

「町の担当者が、一人の人間として親身に寄り添っている」
「地域の人たちが、新しい挑戦を温かく見守っている」

こうした温かな空気の背景には、この町が育んできた歴史があるのかもしれません。かつて阿武隈川を通じた交易が盛んだった丸森町には、新しい物や外から来る人を受け入れる、おおらかな気質が根付いているといいます。

新しく商売を始める人に対し、もともと事業を営んでいる方々が「一緒に地域を盛り上げよう」と声をかけ、応援してくれる。住民の方も、新しい拠点や名産品ができることを我が事のように喜び、興味を持って店を訪ねてくれる。そんな風通しの良い雰囲気が、この町にはあります。

私自身、この町で仕事を始めたばかりの頃、地元の方から「”MADE IN MARUMORI”というパッケージが誇らしい」と言葉をかけられたことを今でも思い出します。移住して間もない自分が手がけたものを、こんなにも温かく「丸森のもの」として受け入れてくれる。その事実に、どれほど励まされたか分かりません。

新しい挑戦には、常に不安がつきまといます。けれど、すぐ隣に応援し、手を貸してくれる誰かがいる。この数値化できない「空気感」こそが、丸森での一歩を支える何よりの土台になっているのだと感じます。

地域おこし協力隊から起業する人が多く、定着率が高いことも丸森町の特徴のひとつです。現地説明会やお試し移住などの機会を通して、移住を決める前の段階から町の人たちと出会うことができます。やはりここでも、仕事や制度の前に人のあたたかさに触れたことが、この町を選ぶ理由になったという声を多く耳にします。

暮らしたいと思える町であることに加えて、身近にロールモデルとなる先輩たちがいることも、大きな支えです。自分より少し先に一歩を踏み出した誰かが、今日も町のどこかで、等身大の暮らしを楽しんでいる。その健やかな姿が、「私にもできるかもしれない」という希望の光となり、後に続く人たちの背中を静かに押し続けています。

小さな願いが、この町の日常に

振り返れば、この10年で生まれた仕事のどれもが、最初は誰かの小さな「願い」から始まりました。「こんな場所があったらいいな」「この景色を守りたい」。そんな個人の思いが、この場所で言葉になり、試行錯誤を経て、やがて町の風景の一部になっていきました。

起業は、特別な才能を持つ人だけのものではありません。ここにあるのは、暮らしの延長線上にある、手触り感のある挑戦です。誰かのために何かをしたい、今の自分にできることから始めてみたい。そんな純粋な動機が尊重され、形にできる町。それが、今の丸森町です。

一つの節目を迎え、また次の10年へ。一人ひとりの「やってみたい」が、この町の新しい日常になっていく。その景色を、これからもすぐそばで見守り、共に歩んでいければと思います。

文 / 山下久美

お問い合わせはこちらから

丸森クラスタ CULASTA CULTURE AND STARTUP

丸森クラスタは、丸森町の自然と人が紡ぐカルチャーを大切に、
丸森町で起業したいなぁと思っている町内外の方を、
丸森町全体で全力で応援する起業サポートセンターです。

まるまるまるもりプロジェクト

都会での生活に満足できない方の、
地方での柔軟なライフスタイルを応援する、
丸森町の「移住&起業」プロジェクト。