「地元に貢献したい!」
「いつかは地元に戻りたい!」
「だけど、自分には何ができるのだろう…?」
こんな風に考えたことはありませんか?
せっかくそのような地元への想いがあっても、なかなか実行に移すのは容易ではありませんよね。
さて今回は、宮城県丸森町で23歳にして父の藍染を継ぎ、起業家として独立。
そのほかにも、一般社団法人ふらっとーほくの理事を務めるなど、丸森町で精力的に活動している、八巻眞由さんにインタビューをしてきました!
染師 八巻 繭 さん
本名は八巻眞由。1992年岡山県美星町で生まれる。同時期に、父である秀夫が藍染を始める。18歳から父・秀夫の工房「野風」で藍染を手伝い始める。2016年、「がらん」を設立し、独立。2代目として藍染を仕事とし、藍染をより多くの人に手に取ってもらえるよう奮闘中。そのほか、一般社団法人ふらっとーほくの理事も務めるなど様々な活動にも励んでいる。
——お父さんの藍染を継ごうと思ったのはなぜですか?
今思えば、理由は2つあります。
まず1つ目は、ある日突然、何気なく見ていた空が”藍”に見えたことから。
高校2,3年生のころ、進路を決められず悩んでいて、教室の窓からいつも空を見ていました。その日は雲一つない青空が広がっていたのですが、突然気付いたんです。
「空のグラデーションが藍染に似ている」と。
空だけではなく、空から宇宙へのグラデーションも、海の深さも、地球の青さも、ぜんぶ藍の色だと気づいた瞬間、涙が出てきました。
私の父は、「自然に負荷をかけない仕事がしたい」と天然藍染の道に進み、自然や宇宙をテーマに作品を作っています。
この時、父の作品へ込める想いを初めて感じ取った瞬間でした。
(父の作品)
そういう視点を持って、改めて父の作品を見るようになってから、父の仕事を尊敬するようになったんです。
次に2つ目は、父が本物の仕事をしていることに気付いたことから。
ちょうどそのころ、偶然父以外の藍染作品を見る機会があったのですが、柔軟剤のようないい匂いがしたんですよね。
これは「藍のにおいじゃない」と思うと同時に、「父は本物の仕事をしているんだ!」と気付きました。
父の藍染は、化学薬品や合成藍を一切使用しない100%天然のもの。
江戸時代からの手法を守って藍染をしている職人は、日本でも数える程度しかいません。
もし父が死んでしまったら、その貴重な職人が一人減ってしまうということに危機感を覚えました。
その時をきっかけに、いつかはこの価値を引き継がなければいけないという使命感を感じていました。
その後震災などの影響もあり、今がそのタイミングだと感じています。
——そうだったんですね。八巻さんはずっと丸森町で生活していたと思いますが、地元を出たいと思ったことはありませんでしたか?
うーん、そこはなんとも言えないのですが、少なくとも周りの子が言う「丸森は何もないから早く都会に出たい」のような都会への憧れはありませんでした。
これも理由は2つあって、一つは、「丸森はいいところだ」という認識を小さいころから持っていたから。
(八巻さんのお気に入りの丸森の風景)
両親は、豊かな自然と藍染に必要なきれいな水を求めて宮城県丸森町へ移住しました。
今となっては、どこの地域も移住促進に力を入れていますが、20年前は”Iターン”という言葉が出始めたくらいの時。当時は、どこに行っても全く歓迎してもらえなかったそうです。
しかし、”よそ者”への向かい風が強かった中、温かく迎えてくれたのがこの丸森町でした。
両親の移住をサポートしてくれた丸森町の方々は、当時3歳だった私を娘みたいに可愛がってくれました。その関係は今でも続いています。
だから、「丸森町はよっぽど良いところなんだ!」と小さいころから認識していました。
もう一つの理由は、両親が都会出身だったので、ある程度都会を見せてもらっていたから。
長期休みは必ず両親の実家に帰省していましたが、人が多すぎるし、空気も汚いし、そりゃあ両親も丸森で住むことを選ぶだろうな、と。
だから、自分の生まれ育った丸森町への愛着は小さいころからあり、今でも丸森町のことが大好きです。
とはいえ、ずっとここにいようと決めているわけでもないんです。
旅が好きなので、日本内外問わず「いろいろな地域で暮らす体験」をしてみたいという思いもあります。
でも、これからもずっと丸森町に拠点において暮らしたいという軸はぶれません。
——八巻さんは現在、一般社団法人ふらっとーほくの理事をするなど、藍染以外にも活動していますよね。丸森で精力的に活動するようになったきっかけは何だったのですか?
一番のきっかけは、中高の6年間経験した”ジュニアリーダー”でしたね。
ジュニアリーダーは、地区の中高生が小学生以下の子供たちのお世話をするボランティアのような活動のことです。
(ジュニアリーダー当時)
例えば、地区の子供会に派遣されて子供の遊び相手になったり、社会福祉協議会主催で障害のある方と一緒にクリスマス会を開いたり、地区行事でのウォークラリーのスタッフをしたりします。
この活動の中で地域の大人から感謝されることによって、子供でも「地域の役に立てるんだ!」と嬉しく思ったことを今でも覚えています。
——他にはどんな活動をしているのですか?
中高生時代にジュニアリーダーを経験後、高校卒業とともに町役場の生涯学習課で3年間働いていました。
そこに勤めている間に、”青年団”という地域活性を目的に活動する若者の団体を設立しました。
(青年団での集合写真)
若者を集めたイベント開催や、飲み会のセッティングなど、地域の中でもエネルギーを持て余している若者の横のつながりを作りました。今は、”団長”を卒業しましたが、サポーターとして時々顔を出しています。
そして現在、私が一番力を入れていることは、伊達ルネッサンス塾の運営です。
これは、私が理事を務める一般社団法人ふらっとーほくのメイン事業です。
伊達ルネッサンス塾とは、宮城県南エリアで「地域で何かチャレンジしたいけど、何から始めたらいいの?」という人を応援するための塾です。私自身も1期生として参加し、2期目から運営に携わっています。
今後も丸森町をはじめ、近隣の市町村とも連携しながら広域的に活動していきたいと思っています。
——素晴らしいですね!丸森を盛り上げるために様々な活動していらっしゃると思いますが、そのモチベーションはどこから来るのでしょうか?
実は、私は「丸森を盛り上げたい!」という気持ちでやっているわけではないんです。
「ずっと暮らしたい丸森を自分の手で作っている」という表現のほうがしっくりきます。
私は、「地域=大きな家」に例えることができると考えています。
家には、”家事”と”インテリア”の要素がありますよね。地域でも、同じことが言えると思います。
“家事”は、福祉、教育、自治や様々な課題解決など、最低限地域を守るために必要なもの。
”インテリア”は、地域でより豊かに暮らしていくために必要なもの。
しかし、地域の中でこんなことがあるかと思います。
「福祉や教育は自分の分野じゃない」「集落の草刈りが面倒くさい」のように家事の部分を人任せに考えていたり、「楽しいだけのイベントなんて意味あるの?」とインテリアの存在意義を無駄に深堀りして分からなくなったり。
そういうレイヤーの違いでお互いの価値を小さくしてしまう場面がよくあるように思います。
さらに最近は、「地域」という言葉が肥大化しているように感じます。
でも、地域はあくまで人の集合体であって、誰でも生きているだけで地域の一部をつくっていると思うんです。
実家では当たり前にお母さんがやってくれていた家事も、一人暮らしになれば自分でやらなきゃ暮らせないし、逆に家族が多ければ得意分野を生かしあって分担ができる。
地域は大きな家で、私たちは大きな家族だと考えれば、自分の仕事も地域活動も、その中の何を担っているのか見えてくると思います。
だから私は、藍染も伊達ルネッサンス塾も、そのほかのたくさんの活動も全部、「自分がどんな家でどんな家族と暮らしたいか」を思い描いて取り組んでいます。それらは私の中ではごく自然なことだし、納得しながら活動することができているのです。
——なるほど、勉強になります!それでは最後に、地元へ貢献したいけれど何をしたらよいか悩んでいる方へ一言お願いします!
まずは、あなたの「地元に貢献したい」という想いそのものの根源を見つめなおすことが必要だと思います。
地域活動をしている人は、この3パターンに分かれているような気がします。
1つ目は、義務的な使命感を感じて活動している人。
2つ目は、地域活動をすることによって「貢献欲求」や「承認欲求」を満たしている人。
3つ目は、自分の幸せのために自分が暮らしたい地域を作ろうとしている人。
もし、あなたの「地元に貢献したい」という想いが1つ目や2つ目に当てはまるなら、今すぐ無理に地域活動を頑張る必要はないと思います。その人がその人らしく、幸せに生きていることが大前提だからです。その人にとって地域活動が幸せにつながらない可能性だって大いにあると思いますし、この場合、活動もなかなか継続しないと思います。
一番ちょうど良いのは、この3つ目が当てはまる人。
「自分の幸せ=地域でアクションを起こすこと」
これが一致する人が、まず地域で自分の想いを実行に移せばよいのではないかと思います。
しかし、先ほどもお話しした通り、私にとって「地域は大きな家」です。
みんなが3つ目のような状態になれたら理想だなと思います。その過程で、家族喧嘩とかもしながら、みんなで素敵な家を作れたら最高ですね。
もし、地域で何かしたいと思っている方や何かピンときた方がいらっしゃれば、ぜひ伊達ルネッサンス塾へお越しください!
全力でバックアップしていますし、仲間になれたらいいなと思います。
終わりに
いかがでしたか?
「地元に貢献することが、本当に自分の幸せにつながるのか。まずはそこから考えてみることが大切。」という八巻さんの考え方が最も印象的でした。
地元への貢献の仕方を悩んでいる方にとって、なにかヒントにつながったら幸いです。
そして、まさにそういう方を対象にしている”伊達ルネッサンス塾”も、ぜひチェックしてみてくださいね!
リンク
がらんHP:http://www.garan.blue/
がらんFacebook:https://www.facebook.com/garan.blue/
伊達ルネッサンス塾:http://www.daterenai.com/