『「へぇ~なるほど、知らなかった!」って言ってもらえることが嬉しいんです。だから、そう言ってもらえるようなことをどんどんやっていきたいです。』
と語るのは、”いなか道の駅やしまや”を営む八島哲郎さん。
この道の駅は、宮城県丸森町の地元住民はもちろん、観光客にも人気です。
今回、自らが丸森のアドバルーンとなって観光客にアプローチし続ける、八島さんの魅力に迫りたいと思います!【プロフィール】
八島哲郎さん
宮城県丸森町出身。代々続く八島家の4代目。18歳まで宮城県丸森町で育ち、高校卒業後は上京し、ガソリンスタンドで2年間働く。祖父の死をきっかけにUターンし、現在のやしまやを35年間営んでいる。よその人をアッと言わせるような丸森の魅力を伝え、商品開発やPR活動に精力的に取り組んでいる。
-本日はよろしくお願いします!まず、”いなか道の駅 やしまや”の紹介をお願い致します。
”いなか道の駅 やしまや”は、”ミニ道の駅”をコンセプトに平成22年に誕生しました。ここでは、丸森の商品はもちろん、食品、生活雑貨等の販売をしています。また、直売所や無料休憩所、レストランなども利用できます。
地元客にも観光客にも愛されるお店を目指しているので、来店が難しい地元のおじいちゃんおばあちゃんにこちらから配達しに行ったり、新しいお客様とつながるために時折町外で出張販売をしたりしています。(店内の様子)
-やしまやは「たけのこ」と「干し柿」が有名だと伺いました。
そうなんです。農業部門としてたけのこと干し柿の生産をしています。
毎年たけのこの収穫の時期に直売をしているのですが、「どうしてこんなド田舎の駐車場が混んでいるの!?」と驚くくらいお客さんがいらっしゃいます。私の顔見ると「おはよう」や「こんにちは」の挨拶より先に「たけのこある?」って聞かれるくらい(笑)
また、たけのこカレー、たけのこご飯の素、いちころチョコなどの商品開発も行っており、今も新商品の試作中です。(感動の一日四尺たけのこカレー)
(いちころチョコ。干し柿をチョコレートでコーティングしており、バレンタインにぴったりです。)
さらに、たけのこ掘りや干し柿づくりの体験会も行っています。干し柿作り体験は、なんと7年連続で東京からバスツアーを受け入れています。昨年はそのお客様も含め180人もの方々に参加していただき、会場の柿の干し場がいっぱいになりました(笑)
(3万個の干し柿。見学可能とし、ビジュアルとして見せることも大切にしています。)
-体験会の参加者の反応はいかがですか?
参加者の皆さんには楽しんでいただいていますよ。干し柿づくりも、たけのこ掘りも、都会の人にとっては非日常的な体験ですので。私たち農家にとっては、日常的な作業なのでそんなに楽しいとは思わないんですけどね(笑)
この体験会の時に、ただ掘り方や皮のむき方を教えるだけではつまらないので、「なるほど!」と言ってもらえるような説明も一緒にしています。いかに「え~知らなかった!」と言わせるか。それを考えること自体楽しいですし、私にとってはやりがいなんです。それって人に話したくなりますよね。
-具体的にはどんなお話をされるのですか?
例えば、この「感動の一日四尺たけのこカレー」という商品。信じられないと思いますが、たけのこは1日4尺、つまり1日で120センチ伸びるんです。1ヶ月では10メートル以上に成長します。普通、植物は先端が伸びるのですが、たけのこは節と節の間が伸びるんです。つまり、提灯を伸ばすように伸びるんですよ。本当にそんなに伸びるのかって、定規を当てたくなりますよね(笑)このように、「なるほど!」と人に言いたくなるような話を皆さんにするわけです。私は利益追及が目的というよりも、人を喜ばせたいという気持ちが強いので、喜んでもらえたときは嬉しいですね。サービス精神が旺盛なんですね。だから儲からないのかも知れませんが(笑)
-お客さんとのやりとりの中で、嬉しかったエピソードを教えてください!
震災後、たけのこの出荷停止が2年続きました。それまで一本もたけのこを山に置いてきたことはなかったのに、今後は逆に一本たりとも持ち出せなかったんです。当時、山でたけのこを掘って全部捨てるという、とても辛い経験をしました。出荷できないからといって放っておくと、竹林はたちまち荒れてしまいます。
2年後、ようやく出荷停止解除になりましたが、もう買ってくれるお客さんはいないと思っていました。たけのこなんて、うちじゃなくても近隣の地域でも採れますし。
ですが、出荷停止解除のニュースが流れた途端、お客さんから「待ってたよ!また八島さんのたけのこが食べたいよ!解除になって良かったね!」と電話がかかってきたんです。また販売できる、という収入面での嬉しさではなく、多くの方からの「良かったね」「待ってたよ」の一言が一番嬉しかったです!
他にも嬉しかったことがありました。
震災後、東京から来ていた干し柿づくり体験の参加者に、テレビ局の記者がインタビューしたことがあったんです。「放射能気になりませんか?」と。私からも事前に「出荷停止の指定はされていませんよ」「数値は〇〇なので、問題ありません」等と説明もしていました。でも、普通「安全性は大丈夫みたいですけど、ちょっと気になりますね」と言うだろうと思い、ドキドキしながら横で聞いていたんです。
するとそのお客さんは「いえ、さっきの説明をした八島さんを私は信頼してますから。」と答えたのです!いやぁ、まさか、そんな言葉を聞けるとは思ってなかったので本当に嬉しかったです。今までお客さんに対しては、真面目に、丁寧にお付き合いしてきただけです。それがお客様から信頼していただけたことが何より嬉しかったです。
-これからのやしまやとしての目標は?
やしまやは、近所に家もないですし、ここを目指さないとたどり着けないほど田舎にある店です。そのため、丸森町、耕野地区、やしまやのファンを増やし、多くの方に来ていただきたいです。また、たけのこや柿の手入れは大変ですが、本当に良いものをきちんと作っていきたいという思いもあります。
-やしまやだけではなく、丸森町や耕野地区のファンを増やすことも大事なのですか?
そうですね。地域が豊かになることが最終目的です。自分のところだけが商売繁盛なんて無理です。例えば、うちの干し柿がテレビで映ったとしても、見ている人にとっては「丸森の」干し柿です。だから、丸森町が良くなって、耕野地区が脚光をあび、ついでにやしまやにお客さんが増えてくれたらいいなと思っています。
実際にこんなことがありましたよ。別の直売所に干し柿を出品している知り合いの方から、「八島さんがテレビに映ったおかげで俺の干し柿売れたんだよ」と電話で感謝されました。それでいいんです。私は丸森のアドバルーンみたいな存在であればいいと思っています。-最後に、やしまやに興味を持ってくださった方へ一言メッセージをお願いします!
まずは丸森町にお越しください!この記事を読んでも、おいでいただいてと分かることがたくさんあります。柿の干し場、竹林の風景、阿武隈川、実際に訪れて現場で感じて欲しいです。みなさんとお話がしたいですし、私もいくらでも説明しますので!お茶でも飲んでゆっくりお過ごしください。うちの母も妻もお茶と漬物など用意してお待ちしていますよ。そうそう、駅長のとらおくん(看板猫)にも会いに来てくださいね!