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2024-05-01

【リトル マイ KOSAI】連載スタート!

2023年度のまずやってみるゼミナールに参加した、渡辺瑠花さん。取り組んだテーマは「ローカルの情報収集と発信」。瑠花さんは大学の研究で故郷の地名研究に取り組んだことをきっかけに地域に興味が湧き、もっと小斎の歴史について深堀り、発信していきたいと思うようになりました。また、将来的には、地区で農業に携わりたいという願いも持っています。

ゼミナールの最終発表で、自分の得意な文章を書くこととイラストを活かして小斎を発信していくという決意を語ってくれた瑠花さんに、このCULASTAブログで1年間記事を投稿していただくことになりました!

第一回
なぜ小斎は米どころ?今に伝わる「三無俚諺」
渡辺 瑠花

宮城県、丸森町。自然豊かな田舎町。
昭和29年に2町6村が合併し、今年で町政70周年となります。丸森、舘矢間、金山、小斎、大内、大張、耕野、筆甫の8地区で丸森町です。
そして、今回ピックアップするのは8地区のうちの1つ「小斎地区」。突然ですが、「小斎といえば○○」。○○に入るキーワードは何でしょうか?5秒でお答えください!


・・・丸森をけっこう知ってる人、または地元の人、ほとんどが同じキーワードを思い浮かべているはずです。そう、小斎といえば、米。
みなさんご存知の通り、丸森は町全体で米のイメージが強い。コシヒカリの元である「愛国」発祥の地であり、棚田百選に選出される美田もあり、田園風景は町の象徴そのものです。そんな中でも、米といったら小斎!…なのですが、愛国発祥や棚田百選として有名なのはまた別の地区。なぜ小斎は美味しい米どころなのでしょうか?その理由は、地区に伝わることわざから読み解けます。
そのことわざこそ、小斎の人なら誰でも知っている「石なし下戸なし百姓なし」。無いが3つの、三無俚諺(さんなしりげん)とも呼ばれます。この1フレーズに小斎と米の関係性が現れています。

「石なし」とは、つまり石がない粘土質の土壌を意味し、稲作に適した土地であることを指しています。日本土壌インベントリーの「土壌図」を見てみると、小斎地区の平野部はびっしり青色。これは低地土という川沿いに見られる肥沃な土壌タイプを表しており、日本各地で稲作に利用されている土壌です。

「川沿いの土は養分いっぱいだから、おいしい米ができるんだ」と教えられたことがあります。実際、小斎米の味の良さは町内外から評判で、わたしの母校である旧小斎小学校では、学習田で収穫した米を他校へ贈り、お礼の手紙を貰うなどの交流がありました。子どもの頃から、「おらほの米はうまいんだ!」という、アイデンティティのような、揺るぎない地域自慢が身についていました。土壌図に戻りますと、この青色で表される低地土は、ほぼ小斎~大内に集中しています。日本の米どころといえば新潟、その新潟全域に広く分布するのも同じく低地土。すでに、小斎=米の理由を解明できた気がしますね。今回、改めて土壌データを見てみましたが、なかなか面白い結果となりました。


ちなみに「下戸なし」は酒の飲めない人がいないこと、「百姓なし」は小斎の殿様、佐藤家に仕える武士たちが兼業で農家をしていたこと、を表しています。このことわざは寛永期(1624~1644)から既にあり、住民の間で受け継がれてきました。小斎を生きた当時の人々の、風土や文化への強い関心が伺える上に、こうして今に伝わっている。良いことわざですね。佐藤の殿様の命で、武芸鍛錬と五穀豊穣を祈る伝統行事・奉射祭(やぶさめ)が始められたのも寛永の頃です。

今も昔も、美味しい米どころの小斎地区。人々の生きた証がそこかしこに溢れる小斎。わたしはそんな小斎が好きです。生まれも育ちも小斎、趣味は考えることと描くこと。
大学を経て戻ってきたこの場所で、わたしの描く夢は「半農半芸」!しかし、現在はクリアすべき課題が山積み。実家の田んぼはもう10年以上休耕地。高低差のある敷地は農作業時なにかと不便。野生動物により荒れる畑。年季の入った農機具たち。肥し気のなくなった土地。ざっと挙げただけでもハードルの高いものばかりです。でも、裏を返せば活かせるものばかり!?これらのバリアを乗り越えて、農ある暮らしを実現させたい。「石なし下戸なし百姓なし、バリアもなし」。そんな新・四無俚諺を目指す小斎人の、小斎に関する記事をこんな調子で連載していきます!

大学の卒業研究では、小斎の地名研究に取り組みました。「地元のことを知らなすぎる」そう感じて悩んでいたある日、偶然目にとまった1枚の手書きの地図。地元の人しか知らないエピソードや独特の言い伝えや方言の混ざった地名が、びっしり書き込まれていました。民俗学や考現学に関心のあった私の中で、これはもしや、地名から地域を読解できるのでは?という1つの仮説が生まれた瞬間です。卒業から少し時間は空きましたが、Instagram(chimei__hk)にてその活動をまとめていきます。研究セカンドシーズンでは、より現地踏査に力を入れて小斎と地名の関係を深堀りしていきます。地道に進めていきますので、なんか変なことしてるなーと見守っていただければと思います。まずは1年、よろしくお願いします!

第2回:「半農半芸を描く。起業の妄想その1-職業にまつわる地名」


「リトル マイ KOSAI 」は奇数月1日に更新されます。

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