2018年に、まるまるまるもりプロジェクトの1期生として丸森町に移住してきた柴田さん。「キャリアモデル開発」という独自の事業をスタートしたきっかけなどを伺いました。
※まるまるまるもりプロジェクトとは丸森町で実施されている起業型協力隊のプロジェクトです。
――まずは「キャリアモデル開発」について教えてください。キャリア開発というと、仕事面でのスキルアップや自己実現を想像しますが、それだけではないそうですね。
キャリアモデル開発は、仕事に限らない人の生き方全体をキャリアと捉え、その人がワクワクしたり、心地よいと感じたり、自分らしくいられるような、そういった「あり方」を共に探求していくものです。もちろん仕事面で転職するか続けるかというような相談もありますが、それ以外にも会社の経営で多忙な方が、“やらないこと”を決めたり、自分自身の余白をどう作っていくかということを一緒に考えたりするケースもあります。
よく求人会社でキャリア相談のサービスはありますが、それは企業からお金を頂いて求職者をマッチングするという目的があります。私はそれよりも個人とガッチリ向き合いたいと思いがあったので、利用者の方が直接お金を払ってサービスを受けられる仕組みを考え、2019年4月に「キャリアモデル開発センター仙台」を開設しました。
――自分自身で時間を取るってなかなかできないですものね。ご自身のこれまでのキャリアについては、どのように歩んでこられたのでしょうか。
仙台市で生まれ育ち、大学1年生の時に東日本大震災を経験しました。ボランティア活動に参加する中で復興のために何かやりたいなという思いはずっと持ち続けていて、大学4年生の時にはインターン先としても復興関連の取組に参加しました。その後は修行のつもりで一度東京へ就職することに。いつか東北に戻りたいと思っていたものの、それが叶わず悶々と過ごしていました。そんな折にインターンでお世話になった企業の方と話す機会があり、その方から「いつまでもバッターボックスの手前で素振りをしていても、実際にバッターボックスに立たなければどんな球がくるかわからないよね。」と言われたんです。要は、いくら東京で修行していても実際に東北に入ってみないと何が求められているかわからないんじゃない、ということですよね。それと同時に、まるまるまるもりプロジェクトについて紹介されました。それで、「3年後ダメになっているかもしれないけど、行ってみるか」と。
そうして丸森町に移住したのが2018年の1月です。いきなり事業の立ち上げというのも見えなかったので、まずは石巻で地域のプレイヤーとなっている方の所へ、半年間学びに行くことにしました。そこではイノシシを捌いたり、漁船のバイトに行ったり、カフェや宿泊のお手伝いなどもしたりといろいろな仕事を経験しました。丸森町に戻ってきてからは、CULASTAでのイベントや伊具高校のキャリア教育など地域での活動を広げていきました。そういった様々な体験をした中で、実際に仕事としてやっていくなら自分には何ができるだろうと考えた時に、「人の話を聞く」という事を軸にしていきたいなと思ったんです。そこから協力隊向けにキャリアサポートという仕事をするようになり、さらには個人の方を対象にキャリアモデル開発もスタートしました。
――ご自身も心が向く方へ歩んだ結果が、今に繋がっているのですね。事業を始めた当初に思い描いた姿と今現在の立ち位置を比べていかがですか。
キャリアモデルという文化を作るということはできていないなという反面、それでも6年続けられているというところは良かったなと思う所もあります。また始めた当初、キャリアのプロフェッショナルになるにはどうしたらいいかと考えていた時に、キャリア支援の実践をやりつつ研究もやりたいということを話していたんです。それが、2022年にコロナ禍でリモートが可能になったのをきっかけに筑波の大学院に行き、今年無事修了することができました。そうやって実践と研究の循環をさせていくこと、そして自分の人生でもキャリアの実験をしながら自身の体験を折り込んでいけたらなと考えています。
――丸森町での暮らしについてもお聞きしたいのですが、協力隊の任期終了後も定住された理由や想いはありますか。
自分が丸森町にいる理由としていつも挙げるのは人なんですよね。丸森の人は面白い。それは元々住まわれている方もそうだし、新しく入ってこられた方もなんですが、すごく個性的だし、他者へのリスペクトがあるところが素晴らしいなと思っています。これから丸森町での起業を考えている方にも、ぜひここの方たちと出会ってほしいなと思います。いろいろ話して面白いと思ってもらえたら、その時点で相性がいいんじゃないかな。
ヒトラボTOHOKU
業種:キャリアコンサルティング業
創業:2018年1月
キャリモデル開発の受講期間:4~8か月
文 / 山下久美
撮影 / 佐藤浩子